中抜けの長さではなく、その時間に労働から離れられるかで判断します。呼び出しがあるなら休憩ではありません。
1日の勤務が2回に分かれる形
宿泊施設は、朝食と夕食の時間帯に人手が集まります。そこで勤務を朝と夕方に分け、その間に長い休憩をはさむ組み方が使われます。これが中抜けシフトです。通しシフトと呼ばれる、1回で終わる勤務と対になる言葉です。
リゾートバイトダイブの公式サイトには、仲居の勤務例として「7:00〜11:00 午前勤務/11:00〜16:00 中抜け休憩/16:00〜21:00 午後勤務」が挙げられています。同社は「一日あたりの合計労働時間は8時間程度」と注記しています。
ここで数字をもう1つ出しておきます。始業7時から終業21時まで、家を出てから帰るまでは14時間。実働8時間と拘束14時間は別の数字です。
実働が同じでも、拘束時間は6時間変わる
求人票に並ぶのは実働の数字なので、2つの形を並べて比べます。
| 通しシフト | 中抜けシフト | |
|---|---|---|
| 実働 | 8時間 | 8時間 |
| 休憩 | 1時間 | 5時間(上のダイブの例) |
| 始業から終業まで | 9時間 | 14時間 |
| 中断中にできること | 施設内で休む | 条件次第(後述) |
同じ「実働8時間」で、拘束は5時間違います。この差が生活のどこに出るかは、中断中に何ができるかで決まります。寮に戻って眠れるなら休息になり、施設で待つだけなら1日が長くなるだけです。
だから比べる順番は、時給ではなく拘束時間から。そのうえで、中断中の条件を聞きます。
休憩には3つの原則がある
労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えることを定めています。厚生労働省の案内では、休憩時間の原則として次の3つが挙げられています。
- 労働時間の途中に与えること
- 原則として一斉に与えること
- 自由に利用させること
休憩時間そのものの定義もあります。厚生労働省の案内では、休憩時間とは「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」を指し、単なる待機時間は含まれないとされています。
この1文が、中抜けを判断するときの物差しになります。5時間の中断が休憩なのかどうかは、長さではなく、労働から離れることが保障されているかで決まります。
「一斉に休憩」は、旅館や飲食店には適用されない
3原則のうち2つめは、実は宿泊施設では外れます。
労働基準法施行規則第31条は、労働基準法別表第一の第四号、第八号、第九号、第十号、第十一号、第十三号、第十四号に掲げる事業と官公署の事業について、第34条第2項(一斉付与)の規定を適用しないと定めています。このうち第十四号が「旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業」です。
つまり、自分だけ他の人と違う時間に休憩に入ることは、制度の上でありえる形です。同僚が働いている時間に一人で休憩するのは、おかしいことではありません。
ここで確認すべきなのは、一斉かどうかではありません。その時間を自由に使えるかどうかです。
呼び出されるなら、それは休憩ではない
迷いやすいのがこの形です。休憩と言われているのに、何かあったら戻ってきてほしいとも言われている状態です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。そして、労働時間として扱わなければならない時間の例を挙げています。そのうちの1つが、これです。
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
呼び出しに応じる前提で待つ時間は、休憩ではなく手待時間です。同じガイドラインは、労働時間に当たるかどうかは労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかで客観的に定まるとしています。
書面に「休憩5時間」と書かれていても、それだけで休憩になるわけではないということです。判断は実態で行われます。
細かく分けられた休憩にも注意が必要
中抜けとは逆に、休憩を短く何度も分ける形もあります。こちらにも厚生労働省の案内があります。
休憩を分割すること自体は可能です。ただし分割された休憩時間がごく短い場合、自由利用が事実上制限されるため、労働から完全に解放されているとは評価されない場合があるとされています。
10分の休憩を6回、というシフトを案内されたら、合計60分という数字ではなく、その10分で何ができるかを考えてください。着替えて戻るだけで終わる時間は、休憩として機能していません。
応募のときに聞く4つのこと
抽象的に「シフトはどんな感じですか」と聞くと、抽象的な答えが返ります。数字と条件で聞きます。
| 聞くこと | それで分かること |
|---|---|
| 始業と終業の時刻 | 拘束時間。実働の数字だけでは出ない |
| 中抜けの開始と終了の時刻 | 中断の長さ。予定を組めるか |
| その時間に寮へ戻れるか、外出できるか | 自由に利用できる時間かどうか |
| 呼び出される可能性はあるか | 手待時間になっていないか |
4つめが決定的です。「基本的には呼ばれません」という答えなら、呼ばれる場合があるということ。そのとき賃金がどう扱われるかまで聞いてください。
派遣で働く場合は、書面で答え合わせができます。厚生労働省のモデル就業条件明示書には「就業日」と「就業時間」の欄があり、就業時間の欄にはうち休憩時間を書く形式になっています。口頭で聞いた時刻と書面が一致しているかを確かめてください。
職種ごとに中抜けが出やすいかどうかは職種の比べ方で扱っています。
終業が遅い日は、深夜割増に入ることがある
中抜けシフトは終業が遅くなりやすい形です。上のダイブの例では終業が21時でしたが、宴会や片付けが延びる日もあります。
午後10時から翌午前5時までの時間帯に働いた場合、通常の賃金の25%以上の割増賃金が支払われます(労働基準法第37条)。時間外労働が深夜に及ぶ場合は、時間外の割増と合わせて計算されます。
確認するのは、求人票の時給表示が深夜割増を含むのか、別に加算されるのかです。同じ時給1,200円でも、含む場合と別に付く場合では総額が変わります。お金の確認項目は応募前のチェックリストにまとめています。
中抜けを前提に、生活を組めるかを見る
中抜けの時間が使えるかどうかは、寮と職場の距離でほぼ決まります。徒歩5分なら戻って眠れます。送迎バスが朝と夕方の2便だけなら、戻る手段がありません。
- 寮から職場までの所要時間と、日中に移動できる手段があるか
- 中抜け中に食堂が開いているか、食事が提供される時間帯はいつか
- 居室で通信できるか(中抜けの過ごし方が変わります)
この3つは寮の条件そのものです。寮の確認リストと合わせて聞くと、1回の問い合わせで済みます。
休憩と手待時間の区別について会社の説明が得られない場合や、書面と実態が違う場合は、都道府県労働局や労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーに相談できます。全国に設置されており、労働時間や賃金の相談を受け付けています。
この記事で参照した情報
- 厚生労働省:休憩時間は法律で決まっていますか。 ↗最終確認:2026/09/23
- 厚生労働省:休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。 ↗最終確認:2026/09/23
- 厚生労働省:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン ↗最終確認:2026/09/23
- e-Gov法令検索:労働基準法(第34条・第37条・別表第一) ↗最終確認:2026/09/23
- e-Gov法令検索:労働基準法施行規則(第31条) ↗最終確認:2026/09/23
- 厚生労働省 確かめよう労働条件:アルバイトの深夜割増について ↗最終確認:2026/09/23
- 厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内 ↗最終確認:2026/09/23
- 厚生労働省:モデル就業条件明示書 ↗最終確認:2026/09/23
- リゾートバイトダイブ(中抜けシフトの説明と勤務時間例) ↗最終確認:2026/09/23
法令や各社の案内は改定されることがあります。労働条件は求人ごとに異なるため、実際の条件は応募先から示される書面と公式の案内でご確認ください。