手取りは総支給額から社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税と、労使協定にもとづく寮費などを引いた額です。所得税は、新しい勤務先の最初の給料日の前日までに扶養控除等申告書を出せば甲欄、出していなければ甲欄より高い乙欄で引かれます(同時に2か所で働くときに出せるのは1か所だけ)。住民税は前年の所得にかかるので、勤務先を移ると自分で納める形に変わることがあります。
手取りは、総支給額から控除を引いた額
手取りの計算は、給与明細を上から下へ読む作業です。
明細は大きく2段に分かれます。上の段が支給で、ここを合計したものが総支給額。下の段が控除で、ここを合計したものが総控除額です。総支給額から総控除額を引いた残りが、口座に振り込まれる額になります。
リゾートバイトダイブの給与明細の説明を例に、項目を並べます。項目名は会社で違いますが、何を足して何を引くかの形は同じです。
| 段 | 項目(同社の明細の説明) | 中身 |
|---|---|---|
| 支給 | 基本 | 時給×勤務時間。残業と深夜を除いた分 |
| 支給 | 基本残・深夜 | 残業の分と、深夜勤務の割増の分 |
| 支給 | その他課税 | 食事手当、有給休暇、休業手当など |
| 控除 | 健康保険料・厚生年金保険料 | 同社で加入している人が対象。日割り計算はしない |
| 控除 | 雇用保険料 | 同社で加入している人が対象。満了交通費を含めない総支給額をもとに計算 |
| 控除 | 所得税 | 給与所得に対する税金 |
| 合計 | 総控除額 | 上の控除の合計。前払いや食事の天引きなども含む |
満了交通費は、契約の期間を終えたときに支給される交通費のことで、同社の説明では雇用保険料の計算から外すとされています。会社によっては、ここに住民税や寮費の行が加わります。
時給×時間は、手取りの出発点にすぎません。求人を比べるときに時給だけを並べると、下の段で逆転することがあります。
図の順番には理由があります。所得税は、社会保険料を引いたあとの額にかかるからです。詳しくは「所得税は、申告書を出した勤務先で甲欄になる」の節で扱います。前払いで受け取った分が給料日の振込額から引かれる仕組みは、給料はいつ入るかの記事にまとめました。
給料から引けるものは、法律で決まっている
会社は、給料から好きなものを引けるわけではありません。
労働基準法第24条第1項は、賃金を全額払うことを原則にしています。引いてよいのは、法令に定めがある場合と、職場の過半数の労働者を代表する側と会社が書面で協定を結んだ場合だけです。この書面の協定を労使協定と呼びます。
控除欄は「法令で引くもの」と「協定で引くもの」に分けて読めます。
- 法令で引くもの:健康保険料・厚生年金保険料(健康保険法第167条・厚生年金保険法第84条)、雇用保険料(労働保険徴収法第32条)、所得税(所得税法第183条)
- 協定で引くもの:寮費や食費など。厚生労働省の案内では、社宅や寮の費用など、労働者が当然に支払うべきことが明らかなもの
名目に心当たりのない控除があれば、何の費用で、どの協定にもとづくのかを会社に聞きます。説明が得られないときの相談先は、最後の節にあります。寮費の名目と日割りの確かめ方は寮で確認したいことで扱っています。
社会保険料は月単位で、辞める月は2か月分のことがある
社会保険に入ると、手取りは減ります。ただし保険料の全額を払うわけではありません。
健康保険料と厚生年金保険料は、原則として本人と事業主が半分ずつ負担します(健康保険法第161条、厚生年金保険法第82条)。雇用保険料も、本人の負担分が法律で決まっています(労働保険徴収法第31条)。明細に出てくるのは本人の負担分です。
健康保険料と厚生年金保険料には、引かれる時期の決まりがあります。
健康保険法第167条と厚生年金保険法第84条は、事業主が給料から控除できるのは前月分の保険料だと定めています。1か月遅れで引く形です。ただし、その事業所で働かなくなった場合は、前月分とその月の分をまとめて控除できます。
その月の分がかかるかどうかは、辞めた日で変わります。健康保険では、資格を失うのは辞めた日の翌日で(健康保険法第36条)、前月から続けて加入していた人が資格を失った月の保険料は計算しません(同法第156条第3項)。月末まで勤めて辞めると資格を失うのは翌月になるので、最後の給料から2か月分が引かれることがあります。
リゾートバイトダイブも、健康保険料と厚生年金保険料は日割り計算しないと案内しています。期間の最後の明細で保険料が2か月分なら、辞めた日と照らし合わせてみてください。
どちらの条文も、控除したときは計算書を作って控除額を本人に知らせるよう事業主に求めています。明細は捨てずに取っておきます。加入するかどうかの確かめ方は社会保険と有給の記事にまとめました。
所得税は、申告書を出した勤務先で甲欄になる
所得税は、給料を払う会社が払うたびに差し引いて、国に納めます(所得税法第183条)。これを源泉徴収といいます。この節の「勤務先」は給料を払っている会社のことで、派遣なら派遣会社、直接雇用なら施設です。
引かれる額は、国税庁の「源泉徴収税額表」で決まります。欄は甲・乙・丙の3つで、丙欄は日ごとの給与に使う日額表にだけあります。どの欄を使うかで額が変わります。
| 欄 | 使われる人(所得税法第185条、国税庁の案内) |
|---|---|
| 甲欄 | 「給与所得者の扶養控除等申告書」をその勤務先に出している人 |
| 乙欄 | 申告書を出していない人 |
| 丙欄 | 日雇いの賃金など。短期の契約は次の節 |
分かれ目は申告書です。名前に「扶養」とありますが、国税庁の「源泉徴収のあらまし」では、国内で給与を受ける人は原則として提出するものとされています。養う家族がいなくても出す書類です。
自分が家族の扶養から外れるかどうかは、この書類とは別に決まります。税と健康保険での判定の違いは扶養の記事に書きました。
同じ資料は、申告書を出さないと乙欄の税額が徴収され、その額は甲欄より高額で、年末調整も行われないと説明しています。年末調整は、1年分の所得税と源泉徴収された額の過不足を、勤務先が年の終わりに精算する手続きです。
提出の時期も決まっています。年の途中で就職した場合は就職後最初の給与の支払を受ける日の前日までに出すとされています。勤務先が変わるたびに、雇用契約のときに受け取る書類の中にこの申告書があるかを確かめてください。
同時に2か所以上から給料を受けるときは、申告書は1か所を経由して出します(所得税法第194条)。どこに出すかは本人の任意で、ほかの勤務先では乙欄になります。
計算の順番も国税庁の案内に書かれています。税額表に当てはめるのは、その月の給料から厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料などを引いたあとの額です。保険料が引かれると、所得税の計算のもとになる額はそのぶん小さくなります。
年の途中で辞めて年末調整を受けず、引かれた所得税が1年分の税額より多くなった場合は、税務署に確定申告をすると納め過ぎの分が戻ります。国税庁はこれを還付申告と呼んでいます。そのときに要るのが勤務先ごとの源泉徴収票です。
年末調整を誰がするか、前の勤務先の分をまとめて精算する方法は、確定申告と年末調整の記事にまとめました。源泉徴収のためにマイナンバーが求められる理由は必要書類の記事で扱っています。
短期の契約なら、丙欄になることがある
1〜2週間の短期では、丙欄が関わってきます。
国税庁の案内では、時給や日給で払うアルバイトで、あらかじめ決めた雇用契約の期間が短い場合は、日額表の丙欄を使うとされています。どの長さまでが当たるかは国税庁のNo.2514に示されているので、契約書の期間と見比べてください。
丙欄が使われる人は、扶養控除等申告書を出す必要がありません。
延長には注意が要ります。同じページは、延長や再雇用で契約の期間が同庁の示す期間を超えたら、超えた日から丙欄は使えないとしています。短期のつもりで始めて延長した場合、途中から甲欄か乙欄に切り替わり、申告書を出していなければ乙欄です。
延長の話が出たら、申告書を出す必要があるかを担当者に聞いてください。短期の勤務先ごとに受け取る源泉徴収票は、短期1週間・2週間の記事で扱っています。延長のときに、有給や無期転換の通算が続くかは延長とリピートの記事にまとめました。
住民税は前年の所得にかかり、勤務先を移ると納め方が変わる
住民税は、所得税と時期がずれます。ここが分かりにくいところです。
総務省の案内では、住民税のうち所得に応じてかかる部分(所得割)は、前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます。課税するのは、その年の1月1日に住所がある市町村です。今年働いた分の住民税は、来年の課税になります。
納め方は2つあります。
- 特別徴収:勤務先が給料から天引きして市町村に納める
- 普通徴収:市町村から届く納税通知書で、自分で納める
前年に給与を受けていて、その年度の初めにも給与を受けている人は、特別徴収の対象です(地方税法第321条の3)。天引きは6月から翌年5月まで、毎月の給料から行われます。
天引きしていた勤務先を辞めたときの扱いは、辞めた時期で分かれます。地方税法第321条の5第2項は次のように定めています。
- 1月から4月に辞めた場合:5月までに払われる最後の給料や退職手当が残りの額を超えていれば、残りがまとめて天引きされる
- 6月から12月に辞めた場合:本人が申し出て、最後の給料などが残りの額を超えていれば、残りがまとめて天引きされる
まとめて引かれなかった分は、普通徴収に切り替わります(同法第321条の7)。春に辞めた人と秋に辞めた人で、最後の明細の住民税の欄が違って見えるのはこのためです。新しい勤務先を通じて天引きを続けてほしいと申し出る仕組みもあります(同法第321条の4第5項)。
辞めるときに、住民税の残りをどう納めるかを勤務先に聞いておくと、あとで通知に驚かずに済みます。住民税そのものの問い合わせ先は、課税している市区町村です。
住民票を実家に置いたまま寮に住むときの、郵便・選挙・住民税の課税の扱いは住民票の記事で扱っています。
寮費・食費は、求人ごとに違う
住み込みのリゾートバイトでは、税金と保険料のほかに生活の費用が控除欄に並ぶことがあります。
何が無料かは、会社と求人で違います。3社の公開ページで確認できた案内を並べます。
| 会社 | 寮費・食費・光熱費の案内(同社の公開ページ) |
|---|---|
| リゾバ.com | 寮費は基本的に無料の求人が多いが、一部有料の職場もある。水・光熱費は無料か一定額まで勤務先負担が多いが、利用状況で自己負担になる場合もある |
| リゾートバイト.com | 食事は提供される場合が多いが、有料の施設もある。求人検索のこだわり条件に「寮費無料」「水光熱費無料」「食費手当あり」がある |
| リゾートバイトダイブ | 明細の総控除額に、前払いのほか食事の天引きなどが入る |
リゾバ.comとリゾートバイト.comは「多い」という書き方で、全部の求人がそうだとは言っていません。応募する求人の条件欄と労働条件の書面で、何が引かれるかを確かめるのが確実です。
応募前に並べておく項目は応募前のチェックリストにまとめています。
食事の条件の読み方と、食事代の天引き・食事手当の税の扱いは、リゾートバイトの「食事付き」の中身に書きました。
明細を受け取ったら確かめること
給料日には、振込額だけでなく明細を開いてください。下の表は、この記事の節の順に並べてあります。おかしいと思ったら、給料を払っている会社に聞くのが最初の一歩です。
| 見る場所 | 確かめること |
|---|---|
| 支給欄 | 勤務時間、残業・深夜の時間が、自分の記録と合っているか |
| 控除欄の保険料 | 加入すると聞いた保険の保険料が並んでいるか(健康保険・厚生年金は前月分なので、月がずれて見えることがある)。最後の明細で2か月分なら、辞めた日と合っているか |
| 控除欄の所得税 | 申告書を出したのに乙欄の額になっていないか(分からなければ担当者に「甲欄ですか」と聞く) |
| 控除欄の住民税 | 引かれているか。辞めた月に残りがまとめて引かれていないか。引かれていないなら、納税通知書が届く住所で郵便を受け取れるか |
| 控除欄のその他 | 寮費・食費・前払いの名目と額が、書面や申請と合っているか |
派遣で働いているなら、聞く相手は現場の施設ではなく派遣会社です。雇用主で窓口が変わる理由は直接雇用と派遣の違いで扱っています。
説明に納得できないときは、総合労働相談コーナーに相談できます。厚生労働省の案内では、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに置かれ、予約不要で無料です。
税額の疑問は、税の種類で窓口が分かれます。所得税は国の税なので、国税庁のタックスアンサーが案内する「税についての相談窓口」へ。住民税は、課税している市区町村に問い合わせます。
この記事で参照した情報
- e-Gov法令検索:労働基準法(第24条 賃金の支払) ↗最終確認:2026/09/29
- e-Gov法令検索:所得税法(第183条・第185条・第194条) ↗最終確認:2026/09/29
- 国税庁:No.2511 税額表の種類と使い方 ↗最終確認:2026/09/29
- 国税庁:No.2514 パートやアルバイトの源泉徴収 ↗最終確認:2026/09/29
- 国税庁:令和8年版 源泉徴収のあらまし(給与所得の源泉徴収事務) ↗最終確認:2026/09/29
- 国税庁:令和8年版 源泉徴収のあらまし(給与所得者の確定申告) ↗最終確認:2026/09/29
- 国税庁:No.2030 還付申告 ↗最終確認:2026/09/29
- e-Gov法令検索:健康保険法(第36条・第156条・第161条・第167条) ↗最終確認:2026/09/29
- e-Gov法令検索:厚生年金保険法(第82条・第84条) ↗最終確認:2026/09/29
- e-Gov法令検索:労働保険の保険料の徴収等に関する法律(第31条・第32条) ↗最終確認:2026/09/29
- e-Gov法令検索:地方税法(第321条の3〜第321条の5・第321条の7) ↗最終確認:2026/09/29
- 総務省:個人住民税 ↗最終確認:2026/09/29
- 厚生労働省:労働基準法第24条(賃金の支払)について ↗最終確認:2026/09/29
- 厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内 ↗最終確認:2026/09/29
- リゾートバイトダイブ よくある質問:給与明細の見方 ↗最終確認:2026/09/29
- リゾバ.com リゾートバイトでよくある質問(寮費・水光熱費) ↗最終確認:2026/09/29
- リゾートバイト.com よくある質問(食事・こだわり条件) ↗最終確認:2026/09/29
法令や各社の案内は改定されることがあります。労働条件は求人ごとに異なるため、実際の条件は応募先から示される書面と公式の案内でご確認ください。